持続可能な組織であるために―多様な働き方を支える人事のしかけ
エムステージグループは2003年の創業から18期目を迎え、社員数も140名を越えました。会社のビジョンに共感してくれる仲間を集めること、パフォーマンスを発揮し続けてもらえる場をつくることは、組織成長の要です。
今回は人材の採用・育成・定着に中心的な役割を果たしている人事部の玉井さんにお話を伺いました。
株式会社エムステージホールディングス 管理部 人事 玉井さん
2019年エムステージホールディングスに入社。幅広いバックオフィスの経験を活かし、ホールディングス化に伴う人事制度設計や、新卒・中途採用に携わる。
「誰もが自身に合った働き方を選択できること」―組織の拡大と、それに伴い生じる課題。いま、人事に求められていることとは?
――社員数も100名を超え、人事部の役割も変わってきたように思います。組織の拡大フェーズにおいて、どのような問題に向き合っているのでしょうか?
以前は若い社員が多く、ライフスタイルも似通っていましたが、結婚して子育てに追われる社員や体調が気になる年齢に差し掛かった社員など、属性が多様化してきました。ライフステージが変化しても、持続的に成果を出し続けてもらえるような組織づくり、風土づくりは組織の持続可能性を考える上で重要だなと考えています。
また、ここ数年でぐっと社員が増えましたので、ビジョンの浸透を通した社員の目線合わせ、経営側と現場のコミュニケーションをつなぐ取り組みについても強化していかなければと思っています。
――エムステージの人事は、「持続可能性」というキーワードをよく使われますよね。
そうですね。人事でとても大切にしている考え方です。私たちは「すべては、持続可能な医療の未来のために」というビジョンを掲げてサービスを展開していますし、国際社会が取り組む、持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献も表明しています。
だからこそ、人事はそのビジョンや社会的意義を一丸となって達成するために、この組織の持続可能性、社員一人一人の持続可能性をテーマとして掲げているんです。
持続的な社員の動機付けにおいては、今期は評価制度の大幅な見直しを行いました。 もともと数値による評価だけではなく、行動評価や社歴の評価(年次給)、専門性の評価(資格手当)など、多様な面から社員を評価する制度を整えていましたが、より明確化・強化しました。
具体的には、評価する行動指針の明確化と目標達成賞与、年次給のUPです。目標設定や評価内容は、クラウドシステム上で事業部長や人事の複数の目を入れることにより透明性を担保しました。
社員が自由な選択の元に、持続的に働き続けられる制度としては、残業の有無や転勤の有無を選択できる「選べる働き方制度」、手を挙げて異動を申し出ることができる「FA制度」、「再入社制度」、「副業制度」などを制度化しています。
医療を支える企業として、健康に働き続けられる、という視点も大切にしています。 年間でBMI値・残業時間・有給消化率などの項目を満たした社員には3万円の「健康増進達成手当」を支給していて、健康診断前後だけではなく、常に健康的な働き方や健康維持を意識している社員が多いように思います。2019年11月には「健康増進達成ボーナス」を新設し、非喫煙者には2万円までの定期健診のオプション補助も始めました。
具体的な制度検討や運用においては、すべての社員に公正公平であること、透明性があること、を絶対条件として考えています。多様な人材が活躍できる合理的配慮の多い組織でありたいと思っていますが、決して特定の人だけが恩恵を受けるような設計や運用はないように気を付けています。
――合理的配慮ですか
そうです。例えば、景色を見るために背の低いこどもに踏み台を使わせてあげることを、誰も不公平とは言わないですよね。それは同じ景色を見るため、同じスタートラインに立つための合理的な配慮なんです。そうした配慮はたくさんあるほうが、皆がしあわせに働ける組織になると思っています!
――本当にエムステージは社内制度が充実していますよね。 私も入社した時に驚きました。
制度のだいたい半分は、社員からのボトムアップで制度化していることもちょっとした自慢です。
ただ、色々と導入するだけではなく、制度を回しきるために人事のリソースをきちんと割いていかなければいけないので、現在はHRTechの仕組みを活用して、作業的な部分のコストを減らしていくことも行っています。 採用・入社後の社員管理・評価等の部分は既にシステム化を完了させていますが、まだまだシステム化で解決できるものがあるので、今もいくつか検討を進めています。
作業が減ることで、今まで出来ていなかった入社後のフォロー面談なども実施できるようになりました。より人の部分にフォーカスし、組織と社員、社員と社員をつなぐフォローアップを行うことで、持続的に成長を続ける組織を目指していきたいですね。
2019年にホールディングス化し、分社化した狙いとは
――2019年10月には、ホールディングス化し、人事を含む管理部は機能会社として分社化しましたよね。
はい。ホールディングス化したことで、事業ごとにこれまで以上に経営スピードを上げて柔軟な組織運営を行う事ができるようになりました。人事にもこれまで以上にスピード感のある対応を求められています。各社、各事業部の戦略を理解して人事面でコミットすると同時に、グループ全体としてどうあるべきか、より経営に近い視点で戦略的な採用計画を提言できるようになりました。
ビジョンやカルチャーフィットなどの観点から、リファラル採用の強化も進めています。もともとリファラル採用の仕組みはあったのですが、会社にとっても応募者にとってもカルチャーマッチをはかれるリファラル採用は、もっと取り組んでいくべきと判断して戦略的人事の1つとして進めています。取り入れるべきこと、推進すべきことを提言できる。これも経営に近いからこそできることですよね。
――分社化後のエピソードなどありますか?
産業保健事業部と連携した採用計画はとてもうまくいきました。保健師事業のスタートにあたり、短期間に必ず複数名採用するという目標があったのですが、これは分社化されていたからこそうまくいったと思っています。分社化することで、責任範囲がはっきりするんです。エムステージグループの機能会社として、“人材の採用定着を受注”しているんですよね。タイムリミットがある中で、ペルソナの設定から、媒体の選定からはじめ入社後のフォローアップまでできたと思います。
各事業部と連携して、結果にコミットして進めていくためにも、事業部内の繋がりに加え、事業部を越えた横の繋がり、働きやすい雰囲気や制度づくりは、これからも強化していきたいと思います。
――お話ありがとうございました。
直接クライアントに対峙することはないポジションですが、「持続可能な医療の未来をつくる」というビジョンに、人事戦略を通して向き合っている姿が見えたインタビューでした。