改正個人情報保護法で高まる医師の責任。「産業医業務 基礎・実践講座(守秘義務編)」開催レポート

エムステージは、産業医経験の少ない医師向けに、業務のポイントを学ぶことのできるセミナー「産業医業務 基礎・実践講座」を、産業医の守秘義務をテーマに10月14日に開催いたしました。

■ポイント

  1. 個人情報保護法の改正で健康情報が「要配慮個人情報」のひとつに明記
  2. 産業医は不調者の病名や検査数値を、上司・同僚にそのまま伝えてはいけない
  3. 労働者の健康情報を企業に開示するための説得方法とは

■開催の背景

2017年5月に全面施行された改正個人情報保護法で、病歴や心身の障害などの健康情報は「要配慮個人情報」として定められ、本人の同意を得ずに情報を取得することが原則禁止、第三者への提供も必ず個別の同意を得て行うことが義務化されました。

これは労働者の健康情報を持つ産業医に深く関わる問題です。そこでエムステージでは、「産業医業務 基礎・実践講座」を開催。産業医経験の少ない医師を対象に、産業医の守秘義務について講義を行いました。

■講座の主な内容

今回が4度目の開催となる「産業医業務 基礎・実践講座」では、産業医の守秘義務について講義を行いました。

特定社会保険労務士の舘野氏、日本医師会認定産業医の山越先生を講師に招き、産業医に関係する守秘義務を解説。その後は事例を基に労働者の健康情報の取り扱い方や、企業担当者への開示に関する注意を学び、ロールプレイで参加者に実践していただきました。

♢病歴に準ずるものは本人の同意なしでの提供はできない

まず舘野氏より、産業医の守秘義務に関連する法律について解説されました。刑法で定められている守秘義務によれば、医師などが正当な理由なしに業務上知り得た秘密を漏らしてはならないとされています。つまり、産業医も業務上知り得た労働者の健康情報を正当な理由なく第三者に提供してはならないとなります。

さらに、2017年5月に全面施行された改正個人情報保護法で、「要配慮個人情報」のひとつに病歴に準ずるものが挙げられ、本人の同意なしでの情報収集を禁止、第三者への提供も個別の同意が必要と定められました。

♢産業医は労働者の健康情報を加工して企業に伝える

本人から同意を得て、労働者の健康情報を第三者へ提供する際にも注意が必要です。労働者の病名や検査値、具体的な愁訴内容を産業医が企業に伝える際には、その情報をそのまま伝えるのではなく、労働者の健康確保に必要な範囲内でその情報が活用されるように加工して伝える必要があります。

例えば、労働者の休職や配置換えに対応できるように、病名ではなく可能な就業範囲を伝えるなどの工夫が重要です。これは健康情報の提供が、本人の不利益や差別に繋がらないように配慮するためです。

♢情報開示は労働者自身のメリットになることを伝える

山越先生からは事例を元に具体的な対応方法をレクチャーされました。事例で取り上げられたのは、糖尿病で通常通りの勤務が困難になっている労働者。このままだと勤務中に病状が悪化しかねないのに、本人は会社に病気を知られたくないと、健康情報の開示を拒否しています。

この場合は、労働者の健康を守るためにも情報開示の説得が必要です。情報を企業へ開示して、配置換えや就業制限などの健康を守るための適切な対応をすることは、労働者自身のメリットになるということを伝えて、同意を得ていく必要があります。

エムステージが開催する「産業医業務 基礎・実践講座」は全4回で開催。今回が最終回となりましたが、今後も産業医の育成、労働者の健康増進に寄与すべく活動を続けて参ります。

■講師プロフィール

山越 志保(やまこし しほ)
日本医師会認定産業医/労働衛生コンサルトタント(保健衛生)
都内の病院で内科医として勤務しながら、日本医師会認定産業医・労働衛生コンサルタントを取得し、産業医としての業務を開始。これまで多岐にわたる企業で、産業医業務を行っている。現在は、都内大学病院の兼任助教・大学院生として勤務・研究をしながら、株式会社さくら事務所を設立し、臨床と産業医活動を行う。

舘野 聡子(たての さとこ)
特定社会保険労務士/シニア産業カウンセラー/メンタルヘルス法務主任者/株式会社ISOCIA代表取締役
大学で労働法を学び、大手流通系企業に勤務後、社会保険労務士事務所に勤務。ハラスメント問題に関するコンサルティング企業、産業医事務所でのメンタルヘルス対応担当を経て現在に至る。特定社会保険労務士としての知識と経験、シニア産業カウンセラーとしてのカウンセリングスキルとメンタルヘルスの知識を統合した対応を得意とする。

■開催概要

「産業医業務 基礎・実践講座(産業医の守秘義務)」※医師向け
日時:2017年10月14日(土)13:00~15:00
会場:株式会社エムステージ内会議室

<本件に関するお問い合わせ>
株式会社エムステージ(M.STAGE CO.,LTD)
広報:関矢 瑞季(せきや みずき)
TEL:03-5437-2950/FAX:03-5437-2951
MAIL:m.sekiya@mstage-corp.jp

※PDF版はこちらをご覧ください
【プレスリリース】産業医業務基礎・実践講座(守秘義務編)